「まずはご挨拶代わりに」
 いつものように、華麗にタロットを取り出す。
「一枚引くのね」
「はい」
 ジャンヌの白い指が、一枚のカードを選び出す。
 星。
 希望と未来を示すカード。
 天にかざしたそのカードの先には、《東の星》が輝いている。
「その星は、人々の願いを集めて輝く星」
「願いを……集めて……」
「申し遅れました。私、レオナルド・ダ・ヴィンチと申します」
 華麗に手を翻し、ダ・ヴィンチは女王にするように礼をした。
 それが始まりだった。
 すべての物語の。
 すべての終幕の。
 今、開演のベルは鳴り、運命は大きく動き始める。


〈了〉