どこへ行くべきか、何をすべきか。
 その予兆の欠片を見いだそうとする、初歩的な占いだ。
「《女教皇》の正位置か」
 黒と白、陰と陽、光と闇、男と女を意味する二本の柱、それに挟まれるようにして立つ女聖職者の姿。
「私が出会うべき男女がそれぞれ存在し、それが私に叡智をもたらす、か」
 自分のことを占ったわけではない。
 これはもっと、世界の先へと到達するための道に過ぎない。
 シャルロット・コルデーがその予兆を示した革命の先にあるもの。
 格納庫で静かに眠る鋼の巨人、《ヴィットーリア・アブソルーテ》を見上げる。
「ヴィットーリア・アブソルーテ・マーク・ディエチ。おまえを動かすことができる運命の持ち主こそ、あるいは私が出会うべき人なのかもしれないな」
 そうつぶやき、そしてダ・ヴィンチは格納庫の扉を閉ざした。

 *

 過去がそうであるように、未来は常に揺らぎに満ちている。
 いかなる占いも、あらゆる可能性を予測することはできない。
 この時彼が予測した未来、それがどのような姿を描くのか。
 それが姿を現わすには、今少しの時を必要とする。

 幕は下りる。
 次の開幕まで、少しだけ闇が広がる。
 運命の時が訪れ、ふたつの星が出会う、その時まで。

第2話~前編~へつづく