「目的は手段を正当化する、と?」
「ええ」
確信に充ち満ちた瞳だった。
それを善と呼ぶか悪と呼ぶか、賢と呼ぶか愚と呼ぶか、それは見る者の主観によって違うだろう。
ダ・ヴィンチは、そこには価値を置かない。
大切なことは、感情と情熱、風と火のエレメントが彼女を揺り動かして、そのことが時代を変えていくだろう、という予感だ。
「素晴らしい。私はあなたのような方を待って、ここに小屋を出しているのです。もう一枚。あなたの未来を。その勇気がおありなら」
「もとより、私は自らの手で未来を選ぶわ」
ためらわず、シャルロットはカードをめくった。
鎌を手にした髑髏。名を口にすることすらはばかられる、十三番目のタロット。
「あら……《死神》だったかしら?」
「その通りです。あなたは近い将来、己のすべてを、覆されることになるでしょう」
「……私が?」
シャルロットは一瞬眉をしかめ、すぐに鼻で笑い飛ばした。
「ええ。それも遠くない未来。あなたという個を構成する要素に、根本的な変化が訪れます。それを多くの人は、死と形容しましょう」
「凡庸な見立てね、占い師。死神のカードを見て、死ぬことを予言するのなら、誰にでもできるわ」
「そうかもしれません。ですがまだ終わりではない。最後のカード、これからのあなたの予兆を」
「いいわ、おつきあいしましょう。もっと凡庸でなければいいけれど」
「あなたの熱情が導くままに、シニョーリ」
シャルロット・コルデーは少しだけ悩み、そしてカードを引いた。
それはおそらく、彼女自身も気付かぬ、予知への不安だったのではないだろうか。
(彼女は何か大きな事をなそうとしている)
それは、ダ・ヴィンチの占いというよりは観察の結果だった。
「カードを表にする前に聞かせて。あなたは、どう見てもただの占い師ではないわね。こんな裏路地で食い稼ぎのために占いをする必要があるとは思えない」
「ご慧眼ですね」
「あなたは、占いで予知を得てここで私を待っていたと言ったわ。なぜ?」
「私の星を揺り動かす、強い意志と宿命を持った人を探しているのです。シニョーリ」
「賞金稼ぎ?」
衣服の下で、シャルロットの筋肉が緊張したのがわかる。何かあれば、短剣、あるいは銃が襲いかかるだろう。